バルブタイミング調整時のミスのより急遽ヘッドのオーバーホールに追い込まれてしまいました。
ついでに圧縮比の計測をしてみました。
トレノ君のエンジンの燃料はガソリンです。
ご存知の通りガソリン自身は非常に燃焼しやすいんですが、さすがにそのままでは爆発するものではありません。
その為エンジンではキャブレタにて適量な混合比(空然比)にガソリンと空気を混ぜて、それをエンジン内にて圧縮した状態で点火プラグにて着火させて爆発力を発生させます。
この圧縮する割合の事を圧縮比と言います。
燃料の種類によって理論的に最適な圧縮比があるようです。
ガソリンエンジンの場合は8〜11ぐらいで、軽油を燃料として使うディーゼルエンジンの場合はもっと高い圧縮比が必要なようです。
一般的には「ピストンの下死点燃焼室容量」に対して「上死点燃焼室容量」が何倍なのかで表します。
実際の圧縮比を計算方法を説明します。
右の図はそれぞれピストンが上死点と下死点にいる状態です。
下死点の場合は
ヘッド容量+ガスケット容量+ピストン容量
が燃焼室容量となります。
これがピストンが上死点になるとピストン容量分が丸々圧縮されるわけです。
つまり上死点の容量は
ヘッド容量+ガスケット容量
が燃焼室容量となります。
したがって圧縮比としては
圧縮比 = (ヘッド容量+ガスケット容量+ピストン容量) ÷ (ヘッド容量+ガスケット容量)
となる訳です。
実際の計算を行ってみましょう
ヘッド容量 :40cc
ガスケット径 :87mm
ガスケット厚み :1.5mm
ピストン径 :85mm
ストローク :70mm
まずはガスケット容量です。
○ガスケット容量 = ガスケット半径×ガスケット半径×円周率×ガスケット厚み
= (8.7cm÷2)×(8.7cm÷2)×3.1415×0.15cm
= 9cc
続いてピストン容量です。
○ピストン容量 = ピストン半径×ピストン半径×円周率×ストローク
= (8.5cm÷2)×(8.5cm÷2)×3.1415×7.0cm
= 397cc
したがって圧縮比としては
★圧縮比 = (ヘッド容量+ガスケット容量+ピストン容量-トップ容量) ÷ (ヘッド容量+ガスケット容量-トップ容量)
= (40cc+9cc+397cc) ÷ (40cc+9cc)
= 446cc ÷ 49cc
= 9.1
になる訳です。
しかし実際の計算には、ちょっと厄介なファクターがあります。
ガスケットやピストン容量については計算で算出が出来ますが、ヘッド容量については公式で算出することはできません。
燃焼室形状は半円形だったり多球形だったりと複雑な為、単純な計算式では算出が出来ません。
また実際にはバルブの出っ張りやプラグ穴があったりしますのでなおさらです。
そこで燃焼室容量については実測にて測定します。
実際に燃焼室にオイルを注入し、入った容量にて燃焼室容量とします。
実際の方法です。
ヘッドにバルブ/プラグをセットする。
ヘッドを燃焼室を上に水平に置く。
燃焼室の上に透明のプラ板をセットする。
プラ板の隙間(プラ板に開けた穴)からオイルを燃焼室に注入する。
プラ板内の空気がすべて抜けた時のオイル注入量を確認する。
以上の方法で燃焼室容量が判明する訳です。
オイル量の計測は注射器等で行うようですが、私の場合は目盛りつきの試験管にて実施しました。
以上で圧縮比の計算が出来そうですが、実はもう一つ厄介な問題があります。
実はピストンの頭の形状は圧縮比をUPさせる為に出っ張っていたり、逆にバルブとの接触を避ける為にとヘッコンでいたりします。
その為この部分の容量も圧縮比の算出に入れなければいけません。
またこちらもヘッド容量と同様に複雑な形状をしている場合が多く、計算では算出できず実測を行うしかありません。
私もこの部分は悩んでClub TE27のSさんから、教えてもらいました。
以下はこの内容をまとめて見ました。
具体的な測定の方法です。
ピストンをヘッドに組み込んだ状態でピストントップの位置をヘッドの上面合わせます。
この状態でヘッド上面からピストンまでの凹寸法を測定します。
これを計算すると、ピストン上部の容量が計算できます。
続いてヘッド容量を測るときと同じようにブロック上面にプラ板をセットしてオイルを注入します。
こちらのヘッドと同じように気泡がなくなるまで入った時の容量を測定します。
以上の結果より
ピストントップ容量 = ピストン上部容量 − オイル注入量
にて算出できます。
厳密にはピストンとブロックとのクリアランス分が誤差として出るはずですが、この辺は無視しても良いみたいです。
以上の点を配慮してトレノ君の圧縮比を算出します。
ヘッドOHで忙しい中、しっかりData取りは実施しておきました。
○ヘッド容量
これは先ほど書いたように実測です。
初めての測定なのでちょっと大変でしたが測定完了です。
・ヘッド容量:67cc
○ガスケット容量
こちらは計算にて算出します。
・ガスケット径 : 8.9cm
・ガスケット厚 : 0.15cm
・ガスケット容量: (8.9/2)×(8.9/2)×3.1415×0.15
= 9.3cc
○ピストン容量
こちらも計算にて算出します。
・ピストン径 : 8.85cm
・ストローク : 7.8cm
・ピストン容量 :(8.85/2)×(8.85/2)×3.1415×7.8
= 479.8cc
ちなみに総排気量はこれの4倍で1919ccとなります。
厳密には1.9Lなんだけど・・・一応2L仕様です(^_^)/~
○ピストントップ容量
今回時間が無くちょっと精度に自信がありません。
・ピストントップ高さ : 0.675cm
・ピストントップ空容量: 22cc
・ピストントップ容量 :(8.85/2)×(8.85/2)×3.1415×0.675-22
= 19.5cc
★圧縮比
いよいよ圧縮比の計算です。
・圧縮比 = (ヘッド容量+ガスケット容量+ピストン容量-トップ容量) ÷ (ヘッド容量+ガスケット容量-トップ容量)
= (67cc+9.3cc+479.8cc-19.5cc) ÷ (67cc+9.3cc-19.5cc)
= 536.6cc ÷ 56.8cc
= 9.45
結果的には現状のトレノ君の圧縮比は 9.45:1のようです。
けっして低い圧縮比ではないんですが、意外と低めの設定のようです。
レージングエンジンでは10〜11ぐらいの場合もあるそうなので、もう少し高めでも良いのかも知れません。
この調整にはヘッドを面研をしてヘッド容量を減らしたり、ガスケットの厚みを薄めのやつに交換したりする事によって変更が出来ます。
ちなみにガスケットを現状の1.5mm厚から0.8mmに変更すれば、圧縮比は10.15まで上がります。
これだけでも十分かもしれません。
しかしメタル系のガスケットなので@25,000ぐらいするので、そんなに簡単には交換できませんが・・・
この辺も今後の課題です。
何時ものように簡単に圧縮比が計算できるExcelシートを作って見ました。
皆さんも自分の車の圧縮比を計算して見ましょう(^_^)/~
それではまた