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第8話 バルブタイミングの実践2

バルブ破損のダメージから復帰したトレノ君ですが、現在甘甘のバルブタイミングにてセットをしてあります。

CLUBのGさんの協力もありバルブクリアランスも最適化が出来そうで、再セッティングの実施を予定しています。

しかし皆さんもご存知かと思いますが最大リフトのポイントが分かり難いのが難点です。

そこでこの最大リフト点をどうやって見つけ出そうかの考察です。

皆さん数学の二次関数を思えています?(^_^)/~

現状の問題点

バルブタイミングの計測ですが一般的にはバルブリフターにダイヤルゲージを当てた状態でクランクを回し最大リフトのポイントをクランクに取付けたゲージにて角度を確認します。

しかし結構クランクも重く1度単位で回すのは結構大変ですし、肝心のカムの山の部分でのリフトの変化量も少なく、ん〜どこが最大なのか??です。

またクランクからカムまでの駆動がチェーンの為、逆回転させる事もできません。

結局この辺かなと言う程度しか判断が出来ないと思います。

Sさんからのアドバイス

バルブタイミング調整〜ヘッドOHまでCLUBのSさんから色々アドバイスを頂いていました。

その中でバルブタイミングの確認についてもアドバイスを頂いていました。

某ショップでも行っているそうです。

ポイントとしては最大リフト点を直接測定するんじゃなく、カムがリフターを押し始めるポイント押し終わるポイントを計測するそうです。

このポイントでしたら比較的分りやすいんじゃないかと思います。

この押し始めと押し終わりのポイントの中心を最大リフト点とするそうです。

カムのプロファイル(形状)が対称である事との条件は付きますが、この方法なら比較的精度良く最大リフト点が判明しそうです。

いよいよ二次関数の登場

どうやればより精度良く測定できるかと考えていましたが、カムのプロファイルを見ているととこかで見たことがある形状です。

ん〜 そうか今から数十年前に見た数学の二次関数のグラフです。

実際には二次以上の関数だとは思いますが、このプロファイルを二次関数に置き換える事が出来れば計算にて最大点が算出できるはずです。

早速やり方を推測してみます。

1.リフト量の計測

まずはクランク回転角毎にリフト量の計測をします。

一定の間隔(多分5度ぐらいかな)で取ってみます。

現状はシュミレーションなのでリフト量は適当な値なので、あまり気にしないで下さい。

2.グラフ作成

このデータを元にExcelにてグラフを作成します。

データを選択し、グラフ作成ウィザードを起動します。

選択するグラフは当然「散布図」です。

これでこのデータを元にしたグラフが出来ます。

なんとなくカムの形に似ていますね。

このままでは最大リフト点はまだはっきりしません。

3.近似曲線の記入

続いてこのデータを元に近似曲線を書いて見ます。

グラフ上のデータを選択し、マウスのBクリックにてメニューが出るので、近似曲線の追加をクリックします。

メニューが出るので、多項式近似(P)を選択してOKをクリックします。

もちろん次数は2を選択します。

するとこのデータを基に近似曲線が書かれます。

これでグラフが出来ましたが、今回は事前にリフト量を二次関数で算出してあったのでデータとぴったりですが、実際のデータではどのくらい同じになるのか楽しみです。

しかしこの状態ではまだ最大リフト点は分りません。

4.数式の算出

グラフは二次関数で書かれているのでその数式があります。

続いてこの数式を表示します。

今度はグラフを選択してマウスのBクリック⇒近似曲線の書式設定をクリックします。

メニューが表示されるのでオプション⇒グラフに数式を表示するにチェックをいれ、OKをクリックします。

するとグラフに数式が表示されます。

この数式がクランク角とリフト量の関係の二次関数の数式になります。

懐かしい y=ax2+bx+c の数式です。

これが分れば最大リフトの値は計算にて算出が可能です。

これに上記グラフの計算式から算出したa,b,cの値を代入すれば最大リフト点と量が算出できます。

計算上の結果です。

データ/グラフから見ても間違いはなさそうです。

実践投入は・・・?

以上で二次関数を使ったバルブタイミングの算出のシュミレーションでした。

理論的には間違っていないようなので、しっかりしたデータが取れればそれなりの精度で最大リフト点の算出は可能かと思います。

しかし前提条件として二次関数にて算出しましたが、3次以上の場合は結構厄介です。

理論的には出せますが、さすがに3次関数以上だと計算式からの算出がかなり難しくなります・・・

さすがに毎晩のアルコールのおかげで出せる自信がありません(~_~)

その時は誰かアドバイスをお願いします。

さて次はこれを使った実践です。

お楽しみに(^_^)/~

基礎データ取り

まずは実際のデータを取って理論通りにバルブタイミングの最大リフト点が計算にて算出できるか基礎データ取りと解析を行います。

10月の3連休ですが雨やイベント参加等忙しかったんですが、取合えずIN側のみですがデータ取りを行いました。

IN側のバルブリフト量をクランク角30〜180°辺りまで、5°刻みで測定しました。

しかしクランクを回す時にやはり行き過ぎてしまう場合があるんですが、散布図なのでこの時のクランク角を入力すればOKです。(クランク角の黄色の部分)

これを元にグラフが作成され、自動的に数式もグラフ上に表示されます。

あとはこれを元にExcelの計算機能を使い、最大リフト点/量を算出して見ます。

一応思わく通りの結果です。

2つの疑問

一応結果が出たんですがちょっと疑問もあります。

数式から算出されたリフト点/量ですがグラフから見るとかなり違いがある様に思えます。

最大リフト点 最大リフト量
計算値 111.3° -0.41mm
グラフ値 106〜110℃辺り -0.14mm辺り

解析が必要な様です。

○数式の問題

今回のクランク角度とリフト量の数字としてはかなり開きがあります。

(クランク角度100°前後に対して、リフト量が2mm前後と50倍以上・・・)

すると計算式の定数(a,b,c)の値が異常に小さくなってしまいます。

特に算出式の関係でaの値が0.0006と小さい為、算出精度に影響が出ているんじゃないかと言う気がします。

そこでリフト量を1000倍してミクロン表示にして見ます。

リフト量が1000倍になった為、計算式がだいぶすっきりしました。

最大リフト点 最大リフト量
計算値 106.4° -94.9µm
グラフ値 106〜110℃辺り -0.14mm辺り

計算値とグラフから読み取った値が近くなってきました。

しかし、もう一つ不満があります。

○データとグラフのずれ

どうしても気になる点が抜本的にデータとグラフのボトムがずれているのが気になります。

3次関数以上にしてもどうしても最大リフト点辺りのずれは解決できません。

冷静に考えます。

カムのプロファイルは以前書きましたが最大リフト点の前後で同じでないそうです。

データを良く見ると最大リフト点の前後で傾きが違うような気がします。

そこでデータを最大リフト点前/後で、2つに分けてみます。

100〜106°付近をセンターにし前がバルブOPEN側、後がバルブClose側としてデータを分けてグラフを書いて見ます。

グラフ精度をUPさせる為最大リフト部分はOpen/Clauseの部分に若干データのオーバーラップを設けました。

すると明らかにOpen/Clauseのグラフの傾きが違います。

Close側に対してOpen側の傾きが厳しくより早くバルブを開ける訳です。

逆にClose側はOpen側に対して傾きが緩やかになっており、これはバルブスプリングの戻りに追順させる為です。

予測通りです(^_^)/~

結局2つの傾きをもったグラフを1つで表示しようとしたので、ボトムがずれたようです。

最終的には2つのグラフの交点が最大リフト点/量になるはずです。

またもや計算式の解析です。

二つのグラフの交点なのでこれは簡単です。

 ax2+bx+c = Ax2+Bx+C

これをx=に直します。

 

二次方程式の交点なのでルートの前に±が付き、解は二つ出てきます。

早速Excelにて計算式を入れて再計算です。

二つのグラフの頂点の間で交差するかと思いましたが必ずしもそうではないようです・・・

グラフを見てもリフト交点辺りで交差しているようなので、便宜上ここをバルブリフト量の中心値とする事にしました。

リフト量はダイヤルゲージのセットの仕方で変わってしまうので、削除しました。

これでより精度良く測定が出来そうです。

今週末はいよいよ実践投入です。

測定再現性は?

久々に天気の良い週末です。

今回はタペットクリアランス調整を行った後に、バルブタイミング調整の実施です。

始める前にちょっと心配です。

タイミング測定の方法は確立できましたが果たして本当に使えるんでしょうか・・・

測定の重要性は測定の仕方等によって結果が違ってしまうようでは問題です。

つまり再現性です。

まずはこの辺から確認です。

先週測定した結果があるので、まずは同じものを再測定してみます。

当然クランクプーリーへのゲージ取付け,ダイヤルゲージの取付け等先週と違うはずです。

これらの再現性も含め確認です。

ん〜なかなか再現性がありそうです。

表にまとめてみます。

  先週 今週
Open側最大リフト点  106.3°  105.8°
Close側最大リフト点  103.2°  103.0°
最大リフト点 交点   98.3°   98.4°

一週間開けての再測定ですが、再現性1°以内と非常に再現性が高い事が確認できました。

ん〜使えそうです。

続いてEX側も同様に確認します。

やはりちょっと甘え目の設定でした。

IN/EXを以前に作ったフォーマットでまとめておきます。

これをベースにタイミングの再調整です。

実際の調整

CLUBのGさんのフォローもあり無事シム交換によるタペット調整が完了です。

いよいよバルブタイミングの調整です。

まずはある程度位置を決めてカムを取り付けます。

調整のし易さからEX側から調整を始めます。

<EX調整1回目>

目測でだいたいの位置に調整し、測定します。

やはり目測で合わしたのでかなりずれて「82,3°」にいます。

今回の目標値は100〜105°付近なのでかなりずれています。

再調整です。

<EX調整2回目>

20°ぐらいは動かして良いようです。

思い切って行きます。

おっと今度は行き過ぎて「109.4°」になってしまいました。

またまた再調整です。

<EX調整3回目>

ん〜なかなか良い所に調整できません・・・

今度は戻しすぎて「 95.8°」です。

だんだん混乱してきました・・・大丈夫かな?

<EX調整4回目>

以前まとめたカムスプロケットの結果を良く見て、再調整です。

ん〜 やっと目標の値に入ってきました。

「101.4°」と目標値の下限ですが何とか調整が出来ました(^_^)/~

再調整も考えましたが、今回はこの辺で決定です。

つづいてIN側の調整です。

<IN調整1回目>

こちらも目測で位置を決めて測定です。

目標値は95〜100°付近です。

おお こちらはいきなり目標値クリアの「 95.0°」です。

偶然ですが助かりました(^_^)/~

タイミング調整完了

これで無事タイミング調整が完了しました。

結果はこんな感じです。

IN側は3°ほど遅れEX側が逆に4°ほど進み、結果的にはオーバーラップはほとんど変わらない感じです。

早速カムカバーを取り付け試乗です。

タペット調整に実施もし、調整良くエンジンが回ります。

何時もの国一バイパスにて全開テストに入ります。

以前(バルブ交換前)に比べると6000rpmを過ぎた辺りからのパワーの落ち込みが少なく、回転にパワーが付いてくる感じです。

7500rpmリミットで回しましたが感じパワーが付いてくるように思えます。

しかしバルブ径はノーマルなのでいきなり8000rpmOverとは行かないようです(^_^)/~

理想とした感じに、又一歩近づくことが出来ました。

おまけです。

いつものExcelシート作ってみました。

良かったら使ってみてくださいね。

 

バルブタイミング確認シート Ver.1 :実践用です。シートをコピーして使ってください。

バルブタイミング確認シート Ver.2 :タイミングのまとめ用です。

 

使い方等質問があるようでしたご連絡下さい。

 

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