ハコスカ君を含めて普通の車は走るのにシフトによるギアチェンジが必要です。
最近の車はオートマだったりCVTとかで勝手にやってくれているので気づかないかも知れませんが…
しかしラジコンや電車等は原則ギアチェンジをしません。
実はこれは動力源であるエンジンとモーターの出力の出方に違いがあるからです。
電気モーターの場合の0回転つまり起動時が最も大きいトルクが発生します。
それが回転が上昇するほど減少してしまうんです。
それに対してエンジンの場合は0回転ではまったくトルクが発生しません。
エンジンはその為に有効なパワー幅(パワーバンド)が狭い特性を持っています。
従ってエンジン車は走り始め等パワーが必要な時このパワーバンド内にてエンジン回転数をKeepしなければいけません。
その為にパワーバンドを有効に使う為にミッションによるギアチェンジが必要になる訳です。
皆さんも交差点等で3速にて行けると思っていた所、思いのほか車速が落ちてしまい慌てて2速に落とす事があると思いますが、これが正しくパワーバンドから外れてしまった状態です。
ミッションの段数/ギア比は車を設計する際にはもちろんメーカーで最適と思われる状態にはなっています。
しかし特殊な環境(サーキット)での走行やエンジン特性/出力の変更等場合によってはノーマルギア比では駄目な場合が発生します。
今回このギア比のお話しです。
エンジンのギア比を表すのは一般的にはこんな感じで表示されます。
ミッション | 1速 | 2.957 |
2速 | 1.858 | |
3速 | 1.311 | |
4速 | 1.000 | |
5速 | 0.852 | |
デフ | 4.444 |
ギア比の数字ですがこれはタイヤを1回転するのに必要なエンジン回転数を表しています。
ミッションの中にシフト毎にギアがありそれを切り替える事によりギア比が変わります。
1速ではより大きな出力を得る為にギア比を大きくし、シフトアップに伴いギア比を下げていく訳です。
因みにギア比0.000のギアを直結ギアと言います。
昔は4速ギアの直結まででしたが、それ以下のギア比を追加してオーバードライブとして5速が追加されました。
このギアによる減速ですがミッションだけでは無くデフでも行います。
最終的なギア比はミッションギア比×デフギア比となりますので1速の場合13.145となります。
つまりエンジン回転の13.145分の1回転でタイヤが回ります。
例えばエンジンが3000rpmで回った場合タイヤが228回転/分回ります。
つまりタイヤの円周×228回/分×60分で1時間で進む距離が判ります。
0.00191km×288回転/分×60分≒26km/h
つまり1速で3000rpm回すとスピードとしては26km/h出る訳です。
同様の3速で3000rpm回すと59km/hのスピードがでます。
この様に簡単に計算で回転数とスピードの関係が算出できます。
このような計算はExcelが得意です。
取り合えずグラフを作ってみます。
ん〜計算上は5速/8000rpmまで回せば242km/h出るはずです。
この様にギア比とスピードの関係が判ると色々判断できます。
さて問題のパワーバンドとギア比の関係です。
最初に言いましたようにエンジンの場合有効な出力を得られるパワーバンドがさほど広くはありません。
したがってそのパワーバンドを外した状態でいくらアクセルを踏み込んでも加速してくれない訳です。
この辺をシュミレーションして見ます。
S20の場合DOHCと言う事も有りL系に比べて高回転にパワーバンドがあります。
取り合えず4000〜7000rpm辺りをパワーバンドとしてシュミレーションして見ます。
各ギアにおけるパワーバンド域でのスピードを算出してみます。
例えば2速で7000rpmまで引っ張るとスピードは97km/hまで出ます。
この状態で3速にシフトアップするとパワーバンド下限の78km/hを上回っているので十分な加速ができる訳です。
つまり各ギアにおいてオーバーラップが十分にありスムーズな加速ができる訳です。
続いてエンジンのチューニング等を実施した場合を考えて見ます。
チューニングにより高回転で大きなパワーを稼ぐ事ができましたが、その反面どうしてもパワーバンドが狭くなってしまいます。
パワーバンドが6〜8000rpmの場合をシュミレーションして見ます。
同じギア比ですが各ギアのオーバーラップの感じがずいぶん変わります。
チューニングによってピークパワーの発生が7⇒8000rpmに上がったので最高速としては211⇒242km/hと大幅にアップします。
しかしその反面パワーバンドの領域が3000⇒2000rpmと狭くなってしまうと問題も発生します。
2速8000rpmまで回して3速にアップしてもスピードが111km/hにしか上がらず、3速でのパワーバンド下限の118km/hに届きません。
つまり3速にアップした途端パワーバンドから下がってしまい、パワーバンドまで上昇するまで加速が鈍ってしまいます。
この様にエンジンチューニングに伴いパワーバンドが狭くなってしまうとノーマルのギア比では問題が発生してしまいます。
メカチューンの場合高出力発生の為にピークパワーのより高回転領域へのシフトを行います。
その為低回転のパワーダウンを起すので必然的にパワーバンドが狭くなってしまいます。
そこでその対策としてギア比の変更を行います。
必要以上に上がりすぎた最高速をデフのギア比で調整する訳です。
ノーマル4.444を5.000辺りまで落とした状態をシュミレーションして見ます。
ファイナルギア比変更に伴い5速での最高速はほぼノーマルの7000rpmと同等になりました。
それに伴い各ギアでのスピードも下がります。
2速8000rpmでも111⇒98km/hに下がり、3速のパワーバンド下限の105km/hを下回ってはいますが速度領域が下がった関係で先ほどよりは加速の鈍りが減少するはずです。
実はファイナルギア比の変更の効果はこの様にローギアー化に伴い加速しやすくするのが目的なんです。
しかし各ギアのつながりについては改善はできません。
ファイナル変更によりパワーバンドのシフトについては改善ができますが、バンドが狭くなる事によるシフトチェンジのつながりの問題は残っています。
抜本的に対策をするのはミッションのギア比を変更するしかありません。
俗に言う”クロスミッション”です。
RS STARTさんでハコスカ用のクロスミッションをリリース(欲しいけどかなりの値段です…)しておりギア比が開示されているのでこれをシュミレーションして見ます。
純正 | クロス | ||
ミッション | 1速 | 2.957 | 2.427 |
2速 | 1858 | 1.677 | |
3速 | 1.311 | 1.258 | |
4速 | 1.000 | 1.000 | |
5速 | 0.852 | 0.759 | |
デフ | 4.444 | 4.625 |
ギア比の数字としてはさほど違わないように見えますが、その効果をシュミレーションしてみます。
ん〜 結構面白い結果です。
ミッション/ファイナルギア比とも変更されているんですが3速のレートは純正とまったく同じ様です。
この3速に2速と4速のギヤ比を近づけているようです。
2−3−4速のギヤ比がクロスしているのでシフトアップ時にパワーバンドを外す事がなくなりました。
正しくこれがクロスミッションなんですね。
S20のようなNAエンジンの場合チューニングに伴いどうしてもパワーバンドが狭くなってしまい、走る場所によっては折角のパワーが生かしきれない場合が出てきます。
コーナーにおいて適切なギア比を設定しないと決して早く走る事ができない訳です。
実際のレースでも当り前なのかも知れませんがエンジン特性のデータによる把握とそのパワーバンドを生かしきるギア比のシュミレーションが重要ではないかと思います。
因みに私のハコスカ君に対しても考えてみましたがパワーチェックの結果ノーマルと同様のパワーバンドがありそうなので街乗りメインの現状ではクロスミッション導入の必要はないのではと思います。
…残念(^_-)(^_-)
今回の件はハコスカに限らず検討できる内容かと思います。
皆さんも検討してみては、いかがでしょうか?
今回の為にギア比シュミレータを作ってみました。
机上の計算だけでも結構楽しめるかと思います。
良かったら使ってみて下さい。
⇒Gear_Rate_Simulation